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by いが扇風機
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キツネになっても、そのに

そのにです。

そのいちはこちらへ


そのさんはこちらへどうぞ



絵師:オーダーメイドOMC様より、夏本様にイラストを描いて頂きました。







ダンジョンの中に入って数十分が経っただろうか。
真っ暗闇の中を光を照らす魔法を使って少しずつ奥へ歩んでいく。
俺は魔法に関してはこれぐらいしか出来ない、というか魔力が常人よりかなり低いのでこれが精一杯だ。
冒険家である以上簡単な火をつけたり水を出したり光を照らしたりといった魔法は必須なのでこれだけは覚えておいた。

そして俺は目的の光る草を発見するのに成功した。
本当に光っていたので簡単に発見する事が出来た。
びっくりするぐらい簡単に見つかりここまで虫の一匹すらいなかったのが恐ろしいくらいだ。

念の為、最悪の事態に備える。
もしかしたらこの草は魔法で作られた幻覚であり罠かもしれない。
もしかしたらこの草は偽物で毒草かもしれない。
……といった感じで色々と考えたのち、両手に手袋をはめてそっと触れる。
そして根元から慎重に根っこを取り出した。
あらかじめ用意しておいたビンに光る草を入れて採取を完了する。
ここまで問題が無かったので、この光る草は本物で間違いないだろう。

依頼が達成したので帰ろうとした時だった。
背後から何かが走ってくる音が聞こえた。

その音に振り向いた瞬間、俺はそれに押し倒されていた。

地面に叩きつけられ背中に痛みが走り顔が思わず歪んでしまう。
何者かに襲われた、痛みを何とかこらえそれを見据える。
目の前に現れたそれは金髪にボロボロの衣服、そして動物耳とたくさんの尻尾をお尻から生やしている女。

――妖狐だ。

妖狐は今すぐにでも俺を噛みたいのか顔を首元へと近付けてくる。
それを両手で必死に抑え噛まれまいようと抵抗する。
噛まれたが最期、俺は妖狐病になってしまいコイツらと同じキツネになってしまうのだ。
それだけは避けなければいけない。

妖狐病に感染しても、感染原因となった妖狐を殺す事で治療が出来る。
だが殺せなかった場合には強力な術師による治療が必要だ。
俺にそんな金は到底用意出来そうにない。
その為俺に出来るのは必死に抵抗するのみだ。

元々前衛型である俺は力にはそれなりに自信がある。
不意打ちされ押し倒され抵抗を続けているがキリが無い。
ふと、片手で握れる程の石を見つけた。それを左手で握り妖狐の頭を強打した。
悲鳴をあげて苦しむ妖狐を押しのけ立ち上がる事に成功する。

妖狐といえど女だ、女性の顔を殴るのは避けたいがどうこう言っている場合では無い。

思ったよりも痛かったのだろうか、頭から血を流して悶絶している。
俺は即座に腰にしまっている剣を抜き、妖狐の胸元を一気に突き刺した。

唖然としていた妖狐がそのままゆっくりと倒れる。
胸から背中から血がドクドクと流れてしばらくピクピクと痙攣していたがじきに動かなくなった。
この妖狐も元々は俺達と同じ人間だったのだろう。
自分は悪くないはずだが、人殺しをしてしまったような気分になってしまい思わず黙祷をしてしまった。


血がべっとりついてしまった剣と、還り血を浴びた自分の衣服を眺め退散しようとしたその時だった。


何者かが背後から抱きついてきた。
鼻をくすぐる甘い香りと背中に当たる二つの柔らかい弾力を感じる。
予想外の出来事に俺は焦るしかない、今度は一体何者なのか。
慌ててふためく俺の首元に何かが噛みついた。


熱い感覚が首元から走るとそれが痛みに変わる、激痛だ。


何とかそれを振り解いた俺はそれを正面に見据える。
金髪で狐耳と九つの尻尾を生やした女、先程と同じ妖狐が俺の目の前にいた。
ただ違うのは二匹目の妖狐という事である、一匹目の妖狐は先程俺が殺したので近くに倒れている。
妖狐の口元からは血が流れており、俺の首元に何をしたのか一目瞭然である。

背筋に冷たいモノが走った。

妖狐は不敵な笑みを浮かべた後、俺から離れるように猛スピードで洞窟の奥へ逃げて行った。
それを見て追おうとした瞬間だった。

ほんの数秒だけ自分の体が日照り熱っぽく感じてしまった。
同時に視界が歪んで立ちくらんでしまう。追おうにも追えない状態になってしまった。
視界が正常に戻ると俺の目の前には誰もいなかった。

残ったのは妖狐の死体とビンに詰めた光る草、そして俺と噛まれた首元から流れる血。

――感染した。
妖狐病という状態異常になってしまった。

いつ俺の体がキツネに変貌してしまうのかわからない状態になってしまった。
下手をすれば今すぐにでも変わってしまうのかもしれない。
俺は迷わず感染元となる妖狐を倒す為に洞窟の奥へと進むしかなかった。



数十分が経過したのだろうか。必死に光を照らし妖狐を探すが見つからない。
焦りが恐怖へと変わりつつある、自分が別の何かに変貌してしまう。そんな恐怖が。

「キヨヒコ?」
「え?」

焦っている俺に何者かが声をかけてきた。
女性特有の高く、柔らかい声。聞きなれた声でもあるその声に振り向いた。

魔法使いがよく着るような黒のローブに黒い杖、黒い……とにかく黒い服ばっかりだった。
そんな服を着るのは俺の知り合いである女――元男の魔法使いフタバ以外にいなかった。

「フタバ!妖狐をここらで見つけなかったか?」
「妖狐?ボクは見てないけどそれがどうかしたの?」
「……噛まれた。妖狐病になってしまった。」
「!!」

フタバは唖然としていた。真剣な表情で俺の体を心配してくれる。

「いつ噛まれたの?」
「数十分前だ。」
「体は大丈夫?」
「今の所はだいじょ……」

『大丈夫』そう一言伝えようと思った時だった。
心臓がドクンと大きな音を立てた。あまりの苦痛に顔から脂汗が噴き出し立つ事すらままらなくなった。
フタバがいきなり苦しみ出した俺を見て何か声をかけているが何を言っているのかすらわからない。

体がバキバキと大きな音を立て始めた。
最悪の出来事が起こってしまった、今自分の体がどうなろうとしているのかがわかってしまう。

肩に激痛が走った、それを両手で掴むと少しずつ小さくなめらかになって行くのがわかる。
呻き声に近い悲鳴をあげるとフタバの顔が引きつっていた。
『見るな!』と伝えようとするが痛みは増す一方である。
両手が細くプニプニした肌に変わり指が女性のソレになってしまう。
爪までもが変化したのだろう、気がつくといわゆる女爪になってしまっていた。

顔にサラサラとしたモノが覆いかぶさった。
それはどんどん伸びており、腰のほうまで伸びたのがわかった。

両耳に激痛が走った、思わず両手で抑える程の痛みである。
少しずつ俺の手に包まれた両耳が小さくなっていく。
そして耳が消失してしまうのがわかった。
次の瞬間だった、頭の上のほうに痛みと共に何かが出てきた。
穴が開く感覚と柔らかいモノが出てくるのがわかる。
それを両手で触るとフニフニした毛で包まれたモノが頭の上から二つ出てきていた。
同時に耳が消失した時、周りの音が一切聞こえなくなっていたが音が聞こえてきた。
フタバが俺を心配している声と俺の呻き声と体が軋む音がまたもや聞こえ始めた。

次に胸に違和感を感じた。
何かに思いっきり引っ張られている感触を感じた。
少しずつ、少しずつそれは俺の胸から出てきた。
ボン!と大きな音を立てたのを最後に違和感は無くなった。

脂汗が額から地面に落ちているのがわかる。
体が熱い、汗が止まらない。
フタバが先程から俺を心配してくれている。
『大丈夫?大丈夫?』とようやく何を言っているのかがわかった。
でも肝心の俺は大丈夫では無かった。

自分の大事な所に激痛がいきなり走った。
ここだけは鍛えてないのでどうしようもない。
フタバの目の前で股間を思いっきり抑え悶絶した。
両手で抑えた股間のモノがどんどん小さくなっていくのがわかった。
小さくなった大事な所を両手で掴めなくなってしまった。

その次の瞬間、俺の腹の下……下腹部に激痛が走った。
何かが捻じ曲げられているような、何かが開いているような。そんな感覚だった。
お腹の下のほうをギュルギュルと音を立てている。

それが終わってもまだ俺の体の変化は終わらない。

尻から何かが出てくる感触を感じた。
何が出てくるのかわかってしまう、これが出てしまったら妖狐そのものになってしまう。
『いやだ!やめてくれ!』と必死に抵抗する。
発したその声がとても高く、女性の悲鳴だったがそういう問題では無い。
少しずつ尻から何かが出てこようとする。それが限界に達した時だった。
大きな音を立てて尻から何かがズボッと出てきた。
それは俺の衣服を破ってしまう程の勢いだった。両手で触るととてもフサフサしていた。

……変化が終わったのだろうか、ようやく痛みが消えた。

全身汗だくで疲労感を感じ、今すぐにでも倒れそうである。
荒く息をしている俺に対しフタバがバッグから何かを取り出した。

「キヨヒコ、これを飲んで。飲まないと精神面まで……。」

フタバがビンを空けて俺に飲み物を差し出した。
俺はそれを両手で掴み少しずつ飲んでいった。
数十秒でそれを飲み干した俺はフタバにビンを返す。

「これで精神面まで侵される事は無いね……一応持っておいてよかった。」

安堵の表情を浮かべたフタバの顔を確認した後、俺は疲労がピークに達し意識が自然と闇へ消えて行くのがわかった。
意識が消える直前、自分はもう人間じゃない……というのを考えて。
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by 295tomato | 2013-03-18 23:53 | 小説 | Comments(0)