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TSFフリーゲームを作成していますたまに小説とか。最近は主にツイッターかFantiaにて活動しています。ツイッター @igasenpuki メール igasenpukiあっとまーくyahoo.co.jp Fantia https://fantia.jp/fanclubs/17725


by いが扇風機
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キツネになっても、そのさん

そのさんです。


そのいちはこちらから

そのにはこちらからどうぞ


絵師:オーダーメイドOMC様より、夏本様にイラストを描いて頂きました。







――いつまで寝ていたのだろうか。
俺はふと目が覚めた、ベッドに寝かされていたのだろうか。
布団が被せられており辺りを見渡すとフラスコやらビンやらに謎の液体が大量にある部屋。
女性になっても何ら変わらない知り合いの見慣れた部屋である事がわかった。
フタバは男の頃から魔法が得意だった。
もっと魔法を極めたいから性転病になってくる何て言いだした時は何言ってんだコイツを思ったが……。
おそらく俺が気絶している間、転送魔法を使ってここまで移動してきたのだろうか。

「あ、キヨヒコ。起きたんだね。」

そうフタバが言い俺に近寄って来た。
手にはコップが握られておりそれを俺に差し出してくる。
俺はそれを手で握ってコップの中身の透明の液体、水を飲み干した。

「んー、なんていうかなんというか……すっかりかわいくなったね!」
「やっぱり……。」

『やっぱり』と言った瞬間だった。
自分の声が今まで聞き慣れた自分の声とはまるで違う、高くカン高い声である。
まるで女性の声だ、と思い両手で喉仏を触るとのっぺらとしており何も無かった。

顔を下に向けるとすっかり長く、サラサラになってしまった金髪が顔に覆いかぶさってしまう。
そして生まれてから一度も見たことがない視点で二つのふくらみを見てしまった。
二つのふくらみの中央には谷間が小さく作られている。
それをすっかり小さく、細くなってしまった両手でそっと触った。

「んっ……。」
「キヨヒコ?今は昼だよ?」

慣れない触られた感触と両手に感じた柔らかい感触。
自分の胸が触られた。それだけで自分の体に起きた異常を感じとる。
実際には触った事が無い女性の胸の感触を自分自身の胸で感じとったのだから。

「まぁ、ボクも女の子になって最初のほうは自分の体に興味津々だったから触りたくなる気持ちはわかるよ?」
「……。」

俺は何も言えなかった。
次に両手で股間を触ると何も無かった。手がスカスカと空を切るだけで何も無い。
それを確認して俺は大きなため息をついた。本当に性別が変わってしまった。

「キヨヒコー?どうしたのさっきからボーっとして。」
「……俺、妖狐になったんだな。」
「そうだよ、残念ながら。」

両手で頭の上に出来た新たな器官を触った。
毛で覆われたそれはとても柔らかくてフニフニしている。
それを頭に押し付けるようにすると周りの音が一切聞こえなくなった。
これが今の自分の耳なのだろう。

次に先程から背中に違和感を感じていたので首を後ろへ向けるとフサフサしているたくさんの毛を発見した。
毛を適当に触ると一本一本に神経が通っているのか尻から触られたという感触を感じた。
手からはとってもふかふかした感触が帰って来た。

「ねぇキヨヒコ、ちょっとだけその尻尾触らしてくれない?前から思ってたんだ。」
「え、あぁ。」

俺はフタバに許可を取る前にすでに尻尾を触り始めていた。
尻尾をなでる、抱きつく、あらゆる事をしていた。

「いち、にぃ、さん……。」
「?」
「ちゃんと九本あるんだね。」
「尻尾が?」
「うん、どれもこれもとってもフサフサしてて暖かかくて気持ちがいいよぉ。」
「そうか……。」

俺は微妙な気分になってしまう。
とっても気持ちがいいのだろう、先程から尻尾に顔を埋めて遊んでいるフタバの顔は楽しそうだ。

「実は……キヨヒコが起きるまでボクはずっと起きてたから眠いんだ。」
「え?」

言い返す前にフタバもベッドに入ってきて俺を背後から抱きついて寝始めた。
抵抗する気も起きなかった。
数分もたたぬうちにフタバはスヤスヤと寝息を立てて寝始めた。どれだけ眠たかったのだろうか。
でも俺は先程まで寝ていたのであまり眠たくない。

「……気が済むまで寝かせておいてやるか。」

すっかり高くなった声で、俺はそう呟いた。





気が付いたら俺は見知らぬ場所に立っていた。
両手には見知らぬ花を握っている。それはとても綺麗でいい香りがした。
純白の服に身を包んだ俺はその花をたくさんの人へ向かって投げた。
それを誰かが受け取ると歓声が沸き起こった。

俺はすぐ隣にいる男に向かって笑みを浮かべる。
男も俺に満面の笑みを浮かべると俺達は唇と唇を自然と重ねあって…………。


「うわあああああああああああああああああああああああああああ!」


カン高い悲鳴をあげて俺は飛び起きた。
隣で寝ていたフタバが変な声をあげてベッドから放り出される。
汗をかいていたのか背中が濡れているのがわかる。
辺りは暗い、夜になっておりいつの間にか俺も寝ていたようだ。
変な夢を見てしまった、よりによって俺が誰ともわからぬ男と結婚して唇を重ね合うなんて……思いだしたくもない。
首をぶんぶんと横に強く振る。
男の頃とはまるで違うサラサラになった長い髪の毛が俺の鼻をくすぶる。

「もうキヨヒコ!優しく起こしてよ!!」
「……すまん。」
「あちゃー、結構寝ちゃったね……暇だし今から飲みでもいく?」
「この格好でか?かなりブカブカだが……。」
「大丈夫!ちゃんと服は貸してあげるから!はいはい、行こう行こう!」

タンスから服(もちろん女性物)を引っ張り出して俺に差し出してくるフタバの顔はとても楽しそうだ。
でも、サイズとか色々問題がありそうである。
フタバの体をまじまじと見つめると、改めて女性になってるんだと思った。
胸はしっかりと出ていて腰もくびれている、お尻も大きい。
自分の体を見ても出ている所は出てて腰もくびれている。

「これなら似合うかな?じゃあお着替えしましょうねー。」
「……フタバさん?」
「こういう時は女の子の先輩であるボクが教えないとね!今後キヨヒコはその体で生きるのだから。」

その後、飲みにいくはずだがフリルがついたヘンテコな服を着せられたり色々とされてしまった。
下着のサイズに関してはフタバのモノとサイズがほぼピッタリだった。
胸を包むブラジャーの感覚とピッチリと股間を包むアレの感覚は慣れそうになかった……。

「おじさーん、今日は美人の娘連れてきたよ?」
「おおフタバちゃんいらっしゃい……って妖狐じゃねぇか大丈夫なのか?」
「大丈夫大丈夫だってこの娘、キヨヒコだもん。」
「なるほどなるほどキヨヒコか……なんだって!?」

フタバは俺を色々な服を着させ楽しんだのか最終的にはフタバがいつも着ている魔法使い用のワンピースっぽい服になった。
スカートはとてもスースーするが、尻尾を通す為の穴を開けなければいけない。
『この服、キヨヒコにあげるよ。』と言いフタバは尻尾を通す穴を開けてくれた。
そしていつもフタバが通っている飲み屋へ連れて行ってくれた。
俺もこの飲み屋はよく利用している。
客は少ないが、一部の冒険家達が好んで通っている店だ。
店主であるオヤジもとてもいい人で俺もよく相談に乗ってもらった。

「……なんだよオヤジ。人の顔をまじまじと見つめて。」
「このキツネの美少女がキヨヒコか、全く世の中どうなるかわからんものだ。
ヨウイチ君がフタバちゃんになった時、顔の造形はあまり変わらなかったが……ここまで変わるとはな。」
「今のキヨヒコは髪の色も変わっちゃったし、目の色も変わっちゃったからそれもあるんじゃないの?」
「ウチで働かないか?給料は出すぞ?」
「遠慮しとく、オヤジはよく女にセクハラしてるじゃねぇか。」

『まあお前のような美少女がいたら、ワシも安心して仕事できんな。
思わず襲ってしまいそうだ。もちろん夜の意味でな。』
とオヤジは言い、酒の用意を始めた。
いつも思うが一言多い、その年齢になっても結婚できないのはそのせいじゃないだろうか。
と思ったが声には出さないでおいた。


「でも……オヤジさんの言う通りだよね?
キヨヒコはもう冒険者稼業できないと思うし……。」
「……そうなるよなぁ、俺もこの体じゃ今までの動きは出来ないと思う。
かと言ってもフタバのように魔法が得意という訳でも無い。
働いて飯を食わないと生きていけないし……。」
「ツテなら一つあるぞ。」
「だからここでは働かないって……。」
「ここじゃねぇよ。」
「え?」

オヤジが急に真剣な目つきになって俺にそう答えた。
昔からこのオヤジはそうだ、困ってる人を放っておけない性格である。

「ワシの知り合いに一人、神社を経営している男がいる。」
「神社……?確か東方の国のほうにある風習で神様を祀ってお祈りをしてるんだっけ?」
「フタバよく知ってるなそんな事。」
「それでだ、そこはイナリ神社という名前らしくキツネを神様として祀っていると言っていた。」
「……。」

何となく予感が出来る。

「そして俺達の目の前に神様に見えてもおかしくないキツネの美少女がいる。」
「それって!完璧じゃん!」
「そこで働けば死ぬまで食う飯に困らないだろう。観光に来る人もいるらしい。」
「よし!キヨヒコ!そこで働こう?」
「わかった、じゃあワシが今から連絡を取り合ってみる。」
「ちょっと待て!俺は『働く』何て一言も言ってないぞ!?」

俺が知らぬ間に勝手に話が進んでいる。
この姿になってまだ一日も経ってないのに話が進みすぎだ。
違和感を感じまくっているこの体で即座に働いて何の意味があるのだろうか。
でも何かをしないと餓死してしまう。生きる為には何かをしてお金を稼がないといけない。

「……うむ、そうか。わかった。」
「オヤジさんどうだった?」
「明日から来てくれ、だそうだ。そいつはとても喜んでいたよ。」
「……もうやだ。」

まるで自分の事かのように喜んでいるフタバと同じように笑っているオヤジ。
その二人の姿を見て今更『やめておく』なんて言える訳が無かった……。

「そういえばフタバ、俺が『光る草』を採取したビン……どこにやったんだ?」
「え?キヨヒコ手荷物持ってたの?」
「え?」
「キヨヒコがボクとあそこで出会った時、キヨヒコ手ぶらだったじゃん。」
「……妖狐を探すのに必死で置き忘れたか……。」
「ま、いいじゃん?」
「よくねぇよ!」








――三ヶ月後

俺が人間の男からキツネの女の子になってしまいはや三ヶ月が経過した。
空が明るくなり始めた頃に目が覚める。
オヤジの紹介で働き始めたこのイナリ神社での仕事が今日も始まる。
住み込みで給料も結構出て食費代はタダ。この好条件で働き始めたのだ。
正直な話、命を賭けて金を手に入れていた冒険者稼業と比べるとかなり楽だ。

慣れた手つきで巫女服を着始める。
足袋(たび)という靴下を履き、普通のブラジャーとは違う和装下着というのを着る。
襦袢(じゅばん)というシャツのような衣服を着て腰紐を蝶結びにする。
その後白衣(はくい)というワンピースのようなモノを着る。
最後に緋袴(ひばかま)という赤い袴を胸のすぐ下の辺りにの高い位置に付けて着替える。

最初の頃はこれが全然わからなくて無茶苦茶に着ていたが毎日のように着替えていたらテキパキと出来るようになってしまった。
女性物の服はどれもこれも面倒である。
ましてや自分の場合、九つのふさふさした尻尾がある為尻尾を服から出すのも一苦労だ。
鏡の前に立ち、今の自分の姿をしっかりと見て問題がないかチェック。

それを終え、問題が無ければ次をホウキを両手に持ち掃除を始める。

キツネになっても、そのさん_c0198300_2354567.jpg


今は楽だが秋にはたくさんの落ち葉が溜まるのだろう。
そうなった場合には焼き芋でも作ろうかなと思いつつ一通り神社周りの作業は終了。

その後俺の雇い主であるトシアキさん達が起きる前に朝食を作り始める。
髪の毛が料理に入らないよう、ハチマキを頭に巻く。
料理が得意では無かった俺だが、フタバやトシアキさん達に色々教えてもらった。
今では料理が結構好きになってしまった俺はこれも慣れた手つきで用意を始めた。

白ご飯、みそ汁……などなど。

それらを用意しているとトシアキさんと奥さんが起きたので『おはようございます。』と挨拶をする。
そして朝食を二人に差し出し自分の分も用意して一緒に食べた。


その後の動きはその日その日によって動きが違ってくる。
今日は特に予定も無いので適当にやってて過ごしてくれ、とトシアキさんから言われた。
俺が働き始めたのは寒い冬の頃だっが、ポカポカしてきた今日この頃。あくびをしながら境内に座り込んだ。
今日は参拝客は少ない日とトシアキさんが言っていたので恥ずかしい姿を見られる事も無いだろう。
すっかりと細くなってしまった自分の体、触ると出ている所はしっかり出ていてひっこむ所はひっこんでいる。
胸は和装下着で抑えているので小さく見える。
両足は骨格上内股になっており、自然と柔らかい両足同士が擦れあって違和感を感じる時もあったが慣れた。
頭から生えた狐耳をピクピク動かして遊んでみたり、フサフサな九つの尻尾の一つを手で触って遊んでみる。

「暇だー。」

思わずそんな言葉が口から出していた。
両手を大きく広げ仰向けに倒れる。
自然と雲一つ無い綺麗な青空を見つめていた。

「やっほー、キヨミちゃんお久しぶり。」

青色に染まっていた視界が突如見慣れた顔に覆いかぶせられた。
いつもと変わらないローブに身を包んだ知り合いの女性だ。

「突然何なんだよ。」
「お客さんに言う台詞?ほら、練習したんでしょ?お客様がこられた時の台詞。」
「……何か わ た し に御用ですか?お客様。」
「キヨミちゃんのふかふか尻尾触りに来たのだけどダメ?」
「お出口はあちらでございます。」
「つれないなぁ。」
「こちらは仕事中で忙しいんだ!勘弁してくれ!」
「その割にはすっごい!ものすっごい暇そうだったよ?」
「ぐぬっ……。」

言い訳出来ない、トシアキさんは適当にしてくれと言っていたが暇なのだ。

「じゃあちょっと触らせてね。うわぁ、一週間ぶりに触ったから新鮮だなぁふかふかふかふかぁ……。」
「……。」

フタバの最近の趣味は俺の尻尾をこうして触る事らしい。
両手で九つある尻尾の一本を両手でそっと挟むようにしてふかふかさせるのが大好きらしい。
とても気持ちいいのか楽しんでいるようだ。

「えぃ。」
「ひゃぅっ!」

突如フタバが九つの尻尾全部を両腕を使い引っ張った。
あまりの感覚に俺の下腹部の何かがきゅんっと音を立てた。
尻尾は強く触ったりいっぺんに動かしたりすると敏感なのか体が自然と反応してしまう。

「『ひゃぅっ』だってさ、あはは。キヨミちゃんもすっかり女の子だね!」
「そういうお前こそ女の子になってるじゃないか……。」
「ほらほら、また男言葉に変わってるよ?お客様に対して言葉遣い矯正するように言われたのでしょ?」
「『俺』はお客様やトシアキさん達に対しては『私』って言うし女言葉も使う時はある!
でもお前は客でも何でもなく、邪魔しに来てるだけだろ!」
「つれないなぁ。」
「気が済んだら帰ってくれ、俺はまだ仕事中なんだから。」
「ああそうそうキヨミちゃん。これ、ボクからのプレゼントだよ。」

そう言いフタバは俺に何かを差し出してきた。
見慣れない文字で何かが書いてある。見た目からこれは食べ物だろうか……?

「この前東方の地に行った時に買ってきたんだ。
何でも『あぶらあげ』っていうキツネが好む食べ物らしいよ?
だから、キヨミちゃんの大好物だと思って買ってきたんだけど……いるよね?」
「…………。」

俺はもう何も言う事が出来なかった。


――おわり。
by 295tomato | 2013-03-18 23:54 | 小説